- なりたい自分へ、なかなか近づけていない気がする
- たいていのことが長続きせず、いつのまにかやらなくなっている
- 目標のための最初の一歩が踏み出せない
そんな方への「スモールステップ思考法」。
今回は前編に続いて後編。
前編はこちら
未読の方は是非こちらから読んでみてほしい。
目標は作るけど目指さない
まずはとにかく簡単で、すぐにできて、モチベーションもいらないことから始める。
スモールステップの基本中の基本を、前編では解説した。
ここでブラウザバック必至の非常識発言をする。
僕は「目標設定は大事だけど、目標へ向かわない方がいい」と考えている。
向かうべきは遠い先のゴールではなく、今まさに取り掛かっている作業そのものだからだ。
前編で紹介したピアノの例で、僕は「1年後に戦メリを弾けるようになる」という一応の目標を立てた。
一般的には、目標は立てたら日々意識できるようにデスクの近くに貼ろうとか、毎朝声に出して読み上げようとか、「きちんと意識すること」が大事だと言われている。
しかし、この目標の達成率を上げたり下げたりするのは「目標へ向かう意志の強さ」ではない。
言うまでもなく「行動量」なのである。
具体的には練習した時間やその密度、効果的な練習方法の模索と実践、練習時間を捻出するためのタイムマネジメントなどだろう。これらの行動の単純な「多さ」が目標達成率を上げるということは異論がないかと思う。
では目標とはなんのために設定するのか。
それは「どう行動するか」を決めるために仮置きされた「変数x」のようなものだと考えるとわかりやすい。
ある方程式でxに6を代入したらy=2になった。2という解が判明すれば、xはなんであったかはもうどうでもいい。
なので極端な話、行動が定まれば目標なんて忘れてもいいとさえ思っている。
こんなことを言うと「目標を忘れる? そんなんじゃ到底目標達成なんてできるはずないだろう!」と叱られそうだ。
でも目標に関しては、さらに考察しなければならないことがある。
固定された目標がもたらすデメリット
そもそも人が設定した「目標」なるものは、本当に正しいのだろうか?
言い換えると、どう「目標の正しさ」を評価するべきだろうか。
例えば「現役で東大に合格する」という目標を立てたとしよう。
現役で東大に合格すれば目標は達成であり、それ以外は達成できなかったということになる。
しかしここで、現実には「目標への温度感によるブレ」という問題が発生する。
つまり「現役で東大に合格したい人たち」は、
- 絶対に現役で東大でないといけない
- 1浪までなら親にお金を出してもらえるため、実は現役合格でなくてもいい
- 東大というのはあくまで「最高で東大」という意味で、早慶で妥協できる
等々、実際には一人ひとり思惑が違う。さらには、目標へ向けて歩んでいく過程のどの段階かによっても変わってくるだろう。悪かった模試の直後では、目標を下方修正したくなる。
目標というのはひとつの点ではなく、グラデーションなのだ。
ここでもし、設定した目標を絶対視し、梃子でも動かさないと決めてしまった場合、以下のようなデメリットが想像できる。
- 高すぎる目標だった場合、挫折を招きやすい
- 新たな知識・情報を得たことで修正すべき目標レベルだとわかったにも関わらず、修正できない
- 目標を達成することが自分自身の全てを決めると錯覚してしまう
「1年後に戦メリを弾けるようになる」という目標は結果的には達成でき、修正は行われなかった。
ただもし上記のデメリットを当てはめると、以下のことが起こり得ただろう。
- 1年後に結局弾けるようにならなかったら、大きな挫折感を味わう
- 途中で難しいと感じても「決めた目標はブラさない」という謎覚悟で修正できない
- 最悪自分を偽り「弾けるようになりました!」と嘘を振りまく可能性がある
目標は「変数x」といったように、柔軟に変更可能なのだ。そこに行動がともなう限りは、どれだけ修正しても意味は残る。
行動そのものに集中する「醍醐味」を味合う
行動中は、行動そのものに集中する必要がある。
そしてスモールステップ思考法で最重要とも言える心がけが、
まさに今足を乗せているステップに集中し、全体を見ない。
ということだ。
一眼レフである被写体にフォーカスすれば、周りの風景はぼやける。その写真のクオリティは格段に上がり、被写体はより鮮明になる。
同じことを、目の前の作業に対し行う感覚を身につけよう。
ピアノの例で言えば、僕はこんなふうに意識した。
1年後に戦メリをひけるようになる目標はいったん忘れた。そのために上手くならなきゃとも思わないようにし、たくさん練習しなきゃとも考えないようにした。1日5分も弾けば合格。なんなら少しでも音を出せばその日は「ピアノを練習した日」として満足するようにした。あくまで当面のスモールステップは「毎日ピアノに触る」なんだと意識し続ける。
いっぽうで、弾いているあいだはその作業の細部に気を配り、全集中する。
姿勢を整え、深呼吸し、指先で鍵盤に触れている感覚を少しも逃さないように弾く。音をよく聴き、乱れたらテンポを遅くして、整うまで繰り返す。ピアノを弾いていること意外の雑念が入り込むことがないよう、鍵盤と一体化する気持ちで。
上手くいくと、いつのまにか1時間、2時間と経過していることもある。
ただしあくまでそれは集中した結果なので、練習時間が長いことを良いとか悪いとか評価しない。評価基準はどこまでいっても「毎日ピアノに触る」が実行できたかどうかなのだ。
ちなみに目の前のことに集中することは、逆に言えれば過去の後悔や未来の心配事を一切考えない時間でもある。いわゆる「マインドフルネス」のメソッドにも近いものがあり、ストレス軽減の効果が期待できると思っている。
終わりに
前編、後編と綴ってきた「スモールステップ思考法」をまとめる。
- 遠くの目標に向かう階段の「1段目」に目を向ける
- 1段目の条件は①分かりやすく簡単、②時間がかからない、③やる気が入らない
- 目標は忘れ、今現在の作業に全集中する
今回は個人の目標を実現するという文脈でスモールステップを話したが、これは「人に物を教えるとき」「仕事で大きなタスクが降ってきたとき」など様々なシーンで応用できるものだ。それらについてはまた別に記事にしたいと思う。
ぜひスモールステップ思考を身につけ、行動の伴う毎日を過ごしてもらいたい。
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